仏五左衛門

奥の細道本文

卅日、日光山の梺に泊る。あるじの云けるやう、我名を佛五左衛門と云。萬正直を旨とする故に、人かくハ申侍まゝ、一夜の草の枕も打解て、休ミ給へと云。いかなる佛の濁世塵土に示現して、かゝる桑門の乞食巡禮ごときの人をたすけ給ふにやと、あるじのなす事に心をとゞめてみるに、唯無知無分別にして、正直偏固の者也。剛毅木訥の仁に近きたぐひ、気稟の清質尤尊ぶべし。

随行日記

一 四月朔日前夜ヨリ小雨降。辰上尅宿ヲ出、止テハ折々小雨ス。(火バサミヨリ板橋ヘ廿八丁、板橋ヨリ今市ヘ貳リ、今市ヨリ鉢石ヘ貳リ。)終日雲、午ノ尅日光ヘ着。雨止。清水寺の書、養源院ヘ届。
大樂院ヘ使僧ヲ被添、折節大樂院客有之。未ノ下尅迄待テ御宮拝見。終テ其夜日光上鉢石町五左衛門ト云者ノ方ニ宿。(一五貳四)

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説明

4月1日(新暦19日)時々小雨 日光 五左衛門

 例幣使街道で日光へ。杉並木はいいのだが、歩道がなく、杉並木の外の踏み跡を歩くことになるが、踏み跡も最後はなくなり、車に気を付けながらの歩きとなる。養源寺に書を届け、東照宮を見て鉢石へ。

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