山形領に立石寺と云山寺あり。慈覚大師の開基にて、殊清閑の地也。一見すべきよし、人〃のすゝむるに依て、尾花沢よりとつて返し、其間七里ばかり也。日いまだ暮ず。梺の坊に宿かり置て、山上の堂にのぼる。岩に巖を重て山とし、松柏年旧土石老て苔滑に、岩上の院〃扉を閉て物の音きこえず。岸をめぐり、岩を這て仏閣を拝し、佳景寂寞として心すみ行のみおぼゆ。
閑さや岩にしみ入蝉の声
〇廿七日 天氣能。辰ノ中尅、尾花澤ヲ立テ立石寺ヘ趣。清風ヨリ馬ニテ舘岡迄被送ル。尾花澤、(二リ)元阪田(一リ)、舘岡(一リ)、六田(二リよ、馬次間ニ、内藏に逢。)天童(一リ半ニ近シ、山形ヘ三リ半。)山寺(未の下尅ニ着是ヨリ)山形ヘ三リ。宿預リ坊。其日、山上・山下巡礼終ル。山形ヘ趣カンシテ止ム。是ヨリ仙台ヘ趣路有。關東道、九十里余。
一 廿八日 馬借テ天童ニ趣。六田ニテ、又内藏ニ逢、立寄ば持賞ス。未ノ中尅、大石田一英宅ニ着。両日共ニ危シテ雨不降。上飯田ヨリ一リ半。川水出合。其夜、勞ニ依テ無俳、休ス。
27日(新暦13日)晴 山寺 立石寺預り坊か
羽州街道を天童へ。天童から山寺街道であるが、芭蕉庵ドットコムに旧道の詳細な説明があるが、加藤楸邨の揮毫の「まゆはきを」句碑のところからの道がはっきりしない。
28日(新暦14日)曇 大石田 高野一栄
土生田まで戻り、大石田へ。