金沢

奥の細道本文

卯の花山くりからが谷をこえて金沢は七月中の五日也。爰に大坂よりかよふ商人何處と云者有。それが旅宿をともにす。一笑と云ものは、此道にすける名のほのぼの聞えて、世に知人も侍しに、去年の冬早世したりとて、其兄追善を催すに

 塚も動け我泣声は秋の風

ある草庵にいざなはれて

 秋涼し手毎にむけや瓜茄子

途中吟

 あかあかと日は難面もあきの風

随行日記

一 十五日 快晴。高岡ヲ立。埴生八幡ヲ拝ス。源氏山、卯ノ花山也。クリカラヲ見テ、未ノ中刻、金澤ニ着。京や吉兵衞ニ宿かり、竹雀・一笑ヘ通ズ。艮刻、竹雀・牧童同道ニテ來テ談。一笑、去十二月六日死去ノ由。

一 十六日 快晴。巳ノ刻、カゴヲ遣シテ竹雀ヨリ迎、川原町、宮竹や喜左衞門方ヘ移ル。段ゝ各來ル。謁ス。

一 十七日 快晴。翁、源意庵ヘ遊。予、病氣故不隨。今夜、丑ノ比ヨリ雨強降テ、曉止。

一 十八日 快晴。

一 十九日 快晴。各來。

一 廿日 快晴。庵ニテ一泉饗。俳、一折有テ、夕方、野畑ニ遊。歸テ、夜食出テ散ズ。子ノ刻ニ成。

一 廿一日(快晴) 高徹ニ逢、藥ヲ乞。翁ハ北枝・一水同道ニテ寺ニ遊。十德二ツ。十六四。

一 廿二日 快晴。高徹見廻。亦、藥請。此日、一笑追善會、於□□寺興行。各朝飯後ヨリ集。予、病氣故、未ノ刻ヨリ行、暮過、各ニ先達而歸。亭主丿松。

一 廿三日 快晴。翁ハ雲口主ニテ宮ノ越ニ遊。予、病氣故不行。江戸ヘノ状認。鯉市・田平・川源等ヘ也。徹ヨリ藥請。以上六貼也。(今宵、牧童・紅爾等願滯留。)

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説明

15日(新暦29日)快晴 金沢 京や吉兵衛

 植生八幡を見て、倶利伽羅峠を越える。途中源氏山を左に見る。卯の花山は同じ山のことかな。金沢まで。

16日(新暦30日)快晴 同 宮竹や喜左衛門

17日(新暦31日)快晴、夜中強雨 同 同

18日(新暦9月1日)快晴 同 同

19日(新暦2日)快晴 同 同

20日(新暦3日)快晴 同 同

 夕方、野田山に遊ぶ。

21日(新暦4日)快晴 同 同

22日(新暦5日)快晴 同 同

 願念寺にて一笑の追善会が催された。

23日(新暦6日)快晴 同 同

宮の越(金石)に遊ぶ。

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